骨盤臓器脱手術 TFS手術について
骨盤臓器脱手術で、有名な手術方法がメッシュを使ったTVM(ティーブイエム:Tension-free Vaginal Mesh)手術です。
テープをおなかや股間から出さずに、骨盤の中の靱帯に縫い付ける方法で、腹圧性尿失禁の手術法のことをTFS(ティーエフエス:Tissue Fixation System)手術といいますが、尿失禁手術だけではなく、骨盤臓器脱にもこのTFS(ティーエフエス:Tissue Fixation System)手術を採用している病院があります。
ただ、TFSを行っている医療機関は、日本ではまだ数カ所しかないようです。
テープが短いので、「ミニスリング」ともいいます。
TFS(Tissue Fixation System)手術とは?
尿失禁手術の種類(TVT手術 → TOT手術 → TFS手術)
尿失禁手術を時系列順で示すと、「TVT手術(古い)」 → 「TOT手術」 → 「TFS手術(最新)」となります。
TFS手術は、尿失禁用の手術で、骨盤底の動きの重要な支点をテープで補強して、臓器の支持とともに、骨盤底のスムーズな動きを回復させる方法です。
プローリンテープが短く、両端に留め具がつけてあります。
このことで、留め具を利用して、尿道を固定する手術で、現在もっとも新しいとされています。
TFSは、弛緩した支持靭帯に、細いテープを沿わせる、いわば「線」による支持と表現されます。
「TVT手術」は、腹圧性尿失禁に対して有効な術式だったのですが、まれに膀胱穿孔(テープを通す針が膀胱に刺さってしまう)、腸管穿孔(針が腸管に刺さってしまう)、大血管損傷(針が太い血管に刺さってしまう)というような合併症があります。
この欠点を克服して、より簡単に手術できるようにするために、「TVT手術」を開発したオーストラリアのペトロス医師が開発した術式がTFS手術です。
尿道の下を通るポリプロピレンテープの先端をアンカーと呼ばれる留め具で、恥骨の背面にある会陰膜という強固な筋膜に装着する方法です。
TFS手術の麻酔の種類
麻酔のする種類は、局所麻酔と言って、全身ではなく、下半身のみに効果を発揮する脊椎麻酔が採用されることが多いようです。意識はありますが、下半身に痛みを感じない状態で行います。
TFS手術は、「入院不要?」
ほとんどの場合は、日帰り手術できるところが多いようです。
TFS手術の「費用」
TFS手術は、骨盤臓器脱と尿失禁の両方に適用である世界標準手術でもあります。
ただ、日本ではまだ保険が通っていない手術のため、高額になっています。
一つの目安として、子宮脱の場合にするTFS手術の費用は、50万円(税抜)です。
TFS手術 費用例)
TFS(尿失禁 1本) | 300,000円(税抜) |
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TFS(子宮脱 2本) | 500,000円(税抜) |
TFS(子宮脱 3本) | 500,000円(税抜) |
現時点(2018年1月)で、保険は効かず、自費ですので、TFS手術を病院で採用しているところは全国的にもまだ少ないのが現状のようです。
TFSテープを「移植する場所」について
腹圧性の「尿失禁」に対する手術と、「骨盤臓器脱」に対する手術で、TFSテープを移植する場所に違いがあります。
尿失禁の手術の場合
尿失禁の手術(TOT手術)の場合は、股間にある足の付け根の膜(閉鎖膜)にとめます。
骨盤臓器脱の手術の場合
骨盤臓器脱の場合は、尿道の下を通るポリプロピレンテープの先端をアンカーと呼ばれる留め具で、恥骨の背面にある会陰膜という強固な筋膜に装着します。
TFS手術のメリット・デメリット
TOT手術の欠点を補った形とよくいわれますが、とても簡単に説明すると「合併症が少ない」ということと「日帰り手術ができる」と言う点が最大のメリットといえるのではないでしょうか?
デメリットとしては、自費治療のため、高額であるということと、尿道を支えることで、すべての骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤)の症状が改善できるか?というと、それはまだなんともいえないという状態ではないかと思われます。
「尿失禁(尿漏れ)」に対しての効果は、ある程度効果が認められているといえるのではないかと予測します。
現代の骨盤臓器脱手術のメイン3種類
昔からある手術(従来法)
膣前壁と膣後壁を縫い縮める手術
TVM(Tension-free Vaginal Mesh)手術(現在一番実績のある方法)
ポリプロピレン素材メッシュでも、テープではなく「シート」という広い面で膀胱や子宮を支えよう、という発想の手術です。一般的には、子宮摘出もしなくてすみます。
LSC(Laparoscopic sacrocolpopexy)手術(最新方法)
日本語では「腹腔鏡下 仙骨腟 固定術」という腹腔鏡を使って行う手術です。
腹部に、5mmから1cmほどの穴を数か所開けて、腹腔鏡という手術用のカメラをお腹の中に入れて、お腹の中からメッシュで膣を引き上げ、メッシュを背骨の下の部分に固定します。
こちらは、40~50代の比較的若い方で、術後も日常的に性行為を行う希望がある方に適した手術です。