骨盤臓器脱のステージ【まとめ】
「骨盤臓器脱」とは、女性の骨盤内にある膀胱、子宮、膣、直腸などが本来の位置から下垂して膣から脱出してくる疾患です。
脱出している臓器・部位に応じて子宮脱、膀胱瘤(膀胱脱)、腸瘤(腸脱)、直腸瘤(直腸脱)、などと呼ばれますが、骨盤臓器脱は、それらの総称です。
ここでは、子宮脱のステージ、膀胱脱のステージ、直腸脱のステージについてそれぞれ解説します。
症状のステージには、骨盤内臓器脱の分類であるPOP-Q分類(膣内の9つのポイントの長さを測る)という分類法(専門家向けのステージング法)が用いられます。
ここでは、内臓本体がどれだけ下がってきているのか?によって、簡易的に判断する方法を以下にまとめてみます。それぞれ、ステージ1〜4に分類されています。
子宮脱(性器脱)のステージ
子宮の位置が、全体的に下垂して脱出している場合と、どちらかといえば子宮下部1/3(子宮頸部といいます)が、正常よりも著しく延長した結果、子宮の先端が膣外に脱出してしまったというケースがあります。
子宮脱(性器脱)ステージ1
子宮が「膣」の入り口部分から1cmまで近づいてきている時は、子宮下垂という状態です。
この段階では、下腹部や膣内に、違和感を覚える程度です。
子宮脱(性器脱)ステージ2~3(不全 子宮脱)
「膣」の入り口1cm前後以内(膣口からー1cmから+1cm)に「子宮」の入り口の部分が降りてきている状態は、「不全子宮脱」とよばれている段階で、ステージ2〜3に相当します。
ステージ3になると、どこの病院でも手術をおすすめすることが多いようです。
この段階から排尿障害などが出てくるので、人によっては、膀胱に常に尿が溜まってしまう尿閉という状態になることがあります。
子宮脱(性器脱)ステージ4(全 子宮脱)
さらに悪化した状態がステージ4です。
「膣」から2cm以上子宮が露出している状態で、「全子宮脱」と呼ばれます。
この状態では、膀胱まで子宮に巻き込まれて降りてきてしまう場合があります(膀胱瘤)。
「膣からピンポン球」や「膣からマンゴー」、「膣からなすび」と言われるように、膣から子宮がかなり飛び出してきている状態です。
子宮脱がひどくなると・・・
子宮脱は、脱出時に膣口周辺の違和感が強く、脱出部の子宮膣部が下着にすれて擦過傷を生じる、出血する、衛生上の問題があります。
子宮全体が下方に移動すると、下腹部の違和感、下腹部痛などの症状も出現してきます。
膀胱脱(膀胱瘤)のステージ
膀胱脱も子宮脱と同じく「膣」から脱出してきます。
膀胱脱(膀胱瘤)ステージ1
膀胱が「膣」の入り口部分から1cmまで近づいてきている時は、膀胱下垂という状態です。
この段階では、下腹部や膀胱周辺に、違和感を覚える程度です。
膀胱脱(膀胱瘤)ステージ2~3
「膣」の入り口1cm前後以内(膣口からー1cmから+1cm)に「膀胱」の入り口の部分が降りてきている状態で、ステージ2〜3に相当します。
ステージ3になると、どこの病院でも手術をおすすめすることが多いようです。
この段階から排尿障害などが出てくるので、人によっては、膀胱に常に尿が溜まってしまう尿閉という状態になることがあります。
膀胱脱(膀胱瘤)ステージ4
さらに悪化した状態がステージ4です。
「膣」から2cm以上、膀胱が露出している状態です。
膀胱脱(膀胱瘤)がひどくなると・・・
膀胱の膣外への脱出部分が、さらに大きくなると、残尿が多くなり、水分摂取するとすぐに膀胱に尿が充満して尿意が出ますので、排尿の回数の増加(頻尿)につながります。
また「トイレが間に合わない」などの切迫性の尿失禁症状も出やすくなります。
直腸脱(直腸瘤)のステージ
直腸脱も子宮脱と同じく「膣」から脱出してきます。
膣入口と肛門は3~4cm離れていますが、肛門から4~5cmなかに入ると直腸になります。
直腸壁と膣壁の間には、脂肪の層とうすい隔壁があるだけで、直腸と膣はかなり接近しています。
分娩後にはこの隔壁は、いっそう薄くなっていることが多いです。
直腸の壁がふくれて、後膣壁とともに膣入口から脱出した状態を直腸瘤(直腸脱)といいます。
直腸脱(直腸瘤)ステージ1
直腸が「膣」の入り口部分から1cmまで近づいてきている時は、直腸下垂という状態です。
この段階では、下腹部周辺に、違和感を覚える程度です。
直腸脱(直腸瘤)ステージ2~3
「膣」の入り口1cm前後以内(膣口からー1cmから+1cm)に「直腸」が降りてきている状態で、ステージ2〜3に相当します。
ステージ3になると、どこの病院でも手術をおすすめすることが多いようです。
この段階から排尿障害などが出てくるので、人によっては、膀胱に常に尿が溜まってしまう尿閉という状態になることがあります。
直腸脱(直腸瘤)ステージ4
さらに悪化した状態がステージ4です。
「膣」から2cm以上、直腸が露出している状態です。
直腸脱(直腸瘤)がひどくなると・・・
直腸脱(直腸瘤)が高度の場合には、膨らんだ部分に便がたまり、排便時にいきみをかけても、圧力は直腸瘤の部分に作用するのみで、うまく排便できないことがあります。
直腸内に残った便は、腸表面からから水分を吸収されてより硬くなり、いっそう排便しがたくなり、便秘症状が強くなります。
便秘になると、さらに強くいきむので、そのため直腸瘤の脱出がさらに強くなるという悪循環になってしまうことがあります。
補足)膣 断端脱
子宮筋腫などの理由で、子宮を摘出したあとに、膣の一番奥の部分が脱出しているものを膣断端脱といいます。
手術で子宮をとっているのに、子宮が出てきた、あるいは子宮を摘出しているのに、脱出するはずがないなどという誤解をもたれることがあります。
膣断端も支えが弛緩していれば、容易に脱出を生じてしまいます。